とっちゃんファーム 
−青空とそよ風と大地と−

 E-Mailアドレスはこちら 
totchanefarm@yahoo.co.jp
上記アドレスをコピーの上、
ご使用のメールソフトを使用して、ご意見を送信して下さい。

ons totchanefarm tiller

 
育苗と本圃の管理
目次
(1)育苗資材 
(2)電熱温床 
(3)気候の変動 
(4)牛糞堆肥 
(5)肥料 
(6)成長促進資材 
(7)耕土 

キュウリの夏
目次
(1)品種 
(2)育苗 
(3)定植 
(4)定植後5週目 
(5)盛夏のキュウリ 
(6)呼び接ぎによる接ぎ木 
(7)断根割り接ぎ 

メロンを露地で
目次
(1)品種 
(2)栽培 
(3)ネットメロンの露地栽培 
井戸を掘って
目次
 (1)製作した井戸掘り器 
 (2)地表面から2.2mまで 
 (3)2.2mから2.5mまで 
 (4)2.5mから2.7mまで 
 (5)2.7mから3.3mまで 
 (6)3.3mから6.2mまで 
 (7)井戸枠の交換 
 (8)畑地への灌漑 
 (9)井戸の掘り下げ 
(10)6.5mの壁 
(11)設備の更新 
(12)6.4mから11.7mまで 

トマトの実は
目次
(1)品種 
(2)育苗 
(3)定植 
(4)開花 
(5)実が大きく 
(6)大玉トマトの接ぎ木 
(7)接ぎ木苗の生育 
(8)ミニトマトの紅小丸 
ニホンミツバチとともに
目次
 (1)重箱型巣箱 
 (2)巣枠式巣箱 
 (3)蜂玉の収容 
 (4)蜜蝋による誘引 
 (5)キンリョウヘンによる誘引 
 (6)ミツバチの飼育履歴 
 (7)蜜蜂飼育届を 
 (8)女王蜂の不調には 
 (9)ニホンミツバチの人工分蜂法の概要 
(10)養母を利用する人工分蜂の実際 
(11)実姉を使った人工分蜂の実際 
(12)早春の人工分蜂 
(13)逆巣型の人工分蜂 
(14)山都式(上桟式重箱法)の人工分蜂 
(15)分蜂の瞬間から蜂玉の捕獲を経て 
(16)分蜂群の飛来が4年ぶりに 
(17)金稜辺で誘引されたミツバチ群 
(18)真夏の人工分蜂 
(19)小ぶりな重箱型巣箱の製作 
(20)分蜂群はいずれの巣箱に 

イチジクの長い実は
目次
(1)バナーネ 
(2)ブラウンターキー 
(3)ロードス 
茄子の花は
目次
 (1)品種 
 (2)育苗 
 (3)ポット鉢上げ 
 (4)定植 
 (5)成育中 
 (6)定植後7週目 
 (7)定植後2ヶ月半 
 (8)ナスの接ぎ木 
 (9)フィルムを利用した接ぎ木 
(10)接ぎ木苗の生育 

温室で育つのは
目次
 (1)温室 
 (2)バナナ 
 (3)パパイア 
 (4)マンゴー 
 (5)ファレノプシス 



 
   温室で育つのは   
 4月に種(*1) を播いたパパイアは、夏が過ぎて青い実をつけている。 6月に入手した三尺バナナ(*2) の稚苗は、次第に大きくなった。 今では20枚以上の葉が茂り、高さも2m近くになってきた。

 もうすぐ小春。
 防寒対策をしてやらないと、枯れてしまう・・・。 ということで、温室内に植えた。
 ところで、左の写真は温室に植えたバナナが生長して、40枚以上の葉が出てきた後に見られる「止め葉(flag leaf)」である。 バナナの普通の葉は「長楕円状」の大きなものであるが、最後に出てくる葉はこのような「旗状」のものである。 この最後の1枚である「止め葉」が、その後に出てくる「花序」の露払いである。 これを見ることができるのは、栽培しているからである。 花序の中に花の集合体である「花房」が詰まっていて、これが成熟してバナナの実となる。
 閑話休題、温室の構造は、
(a) パイプで組んで、透明な(ビニールなどの)シートを張ったもの
(b) アルミフレームに(アクリル板などの)透明板を取り付けたもの
(c) 角材の骨格にビニールなどのシートを張ったもの
が考えられる。
 (a)は、パイプハウス用のパイプや取り付け金具、フィルムなどがセットで市販されている。 パイプ長さを変えることにより、任意の大きさの温室が作れる。 セットを購入(*3) して、組み立てることができる。
 (b)は、小規模のものは組み立てが可能であるが、基本的には専門業者による施工となってしまう。
 (c)は、木材による組み立てとなる。 大きさは、使用する木材に左右される。
 温室の条件としては、
(1) 自作できるもの
(2) 10畳程度の広さのもの
(3) 積雪に強いもの
(4) 保温効果の高いもの
などである。 それらの条件から、使用している温室は、(c)の構造である。 保温のために、農業用透明シート(厚さ0.1mm)で全体を覆ってある。 隙間なく張ることは当然として、ほとんどの部分で、シートが二重になっているようにしてある。 その外側を、積雪や強風に対処するために、透明ポリカ(ポリカーボネート)波板を張る。 棟(むね)部分での波板の接続を簡単にするために、屋根の形状は「かまぼこ型」にする。 使用する透明ポリカ波板は、6尺長さのものを使っている。 手間を考えると、8尺などの長さの波板を使う方が便利だが、ここはコストパーフォマンスの良さ(6尺物は安価に入手できること)を優先する。 波板では隙間風が出入りするが、それは透明シートで防げる。 「透明シート」と「透明波板」の合わせ技である。
 

(*1) パパイアの種は、ここから入手した。

(*2) 「(有)フタバ種苗」生産、「(有)東京花壇」卸売のバナナ稚苗を、近在の園芸店から購入した。

(*3) 近所のホームセンター以外に、農業用資材の通信販売サイトなどから入手できる。


(1)温室

角材による温室の骨組み

温室の上部外観
(屋根が「かまぼこ型」に)

温室の内部
(シートと波板で断熱)
 温室に、兎に角、寒さに弱いバナナとパパイアを植え付けた。
 日中、曇天雨天だと室温の上昇はないが、温室への日照効果は予想以上で、晴天の日には40度前後まで上昇してしまう。 家庭用換気扇とサーモスタットを使用して、30度を超えると、自動的に換気するようにしてあるが、昇温の方が勝ってしまう。 蓄熱による保温効果を活用するため、植物の状態が良好である範囲で、多少の高温状態なることは許容することにする。
 最大暖房熱量5.6kWの家庭用石油温風ヒーター(*4) を使って、最低気温を、年内では20度を確保できることを目標とする。
 年が明けて寒さが厳しくなってくると、最低気温を16度とする。 「厚さ0.1mmの農業用透明シート」と「透明ポリカ波板」で二重に断熱していることもあって、最も外部気温の低い未明の時間帯でも、この温度を維持していける。
 

(*4) 最近の家庭用の石油温風ヒーターは、室温の変化によって、暖房運転の停止、起動ができる点で、電気による暖房と遜色がない。 暖房器具としてのコストパーフォマンスは、購入費と運転費を含めて、家庭用の石油温風ヒーターが優れている。
 ただ、この種の石油温風ヒーターは、消し忘れの防止対策として、連続運転が3時間を超えると自動的に停止するようになっている。 この点を解決しないといけない。 簡単な解決法は、一定時間ごとに、機械的な機構を使って運転延長操作をすればよい。
 連続運転による排気ガスで、ハウス内の雰囲気が悪化してしまう心配がある。 これについては、空気が汚れてくると、温風ヒーター内部のセンサーで自動的に停止するようになっている。 この安全装置は結構敏感で、僅かなことで運転停止するようだ。 最近の器具は、安全性に関して、予想以上によく配慮されている。
 このような用途の暖房器具としては、安心して使用できるものと思われる。
 なお、空気の汚れによる自動停止に関して、対策せねばならない。 空気の汚れを自動で監視することは難しいので、一定時間ごとに強制的に換気してしまうことにする。 一定時間ごとの強制的な換気は、「24時間タイマー」を使えばよい。 たとえば、1時間毎に1分間だけ、換気扇を回すようにするとか・・・。
 既に、温室内部の温度が高くなったときのために、温室外への排気のために25cm「有圧換気扇」が取り付けてある。 これは、「サーモスタット」を使って、ある一定の温度以上になると排気動作をするようになっている。 しかし、換気扇は薄い板一枚で外部と隔てられているだけであるので、(換気扇が動作していないときであっても)厳冬期での室温維持のネックとなっている。 換気扇の数を、増やしたくない。 「サーモスタット」での換気扇のスイッチオンと「24時間タイマー」でのスイッチオンを統合して、1つの換気扇で実現する。 最も簡単な方法は、「リレー」を使うことである。
 左側写真にある「換気扇の制御装置」について、実例として、その内部の構造を具体的に示す。 サーモスタット「MH1210W」とタイマー「WT−03N」を各1個、およびリレー「MY2−02−JT−MBP」2個を、プラスチックボックスの内部に組み込む。 サーモスタットは温度30度以上で「オン」に、タイマーは60分毎に1分間だけ「オン」になるようにしてある。 それぞれの出力を、各リレーの(交流100ボルト対応の)「電磁コイル側」に接続する。 2個のリレーの「ノーマルオープン側」を並列接続にして、交流100ボルトの「オン」「オフ」を制御する。 その制御装置からの100ボルト交流電圧を、換気扇「FY−25GSU3」に接続する。


温風機と時間延長の仕掛
(運転延長ボタンを押す仕掛)

換気扇の制御装置(*4)

室温と湿度
  
温室の内部

バナナ
(奥に幼果)

パパイア
 

マンゴーの花
(バナナと競演)

ラン類
 
 
ドラゴンフルーツ

(2)バナナ
 バナナは、真夏だと5日に1枚のペースで出葉していたが、寒くなった今では、ほとんど葉が生長してこない。 それが、温室へ入れたら、葉が生長し始めた。 葉が40〜50枚ほど出ると、開花するという。 あと20枚ほどの出葉で、待望の開花が見られる。
 温室内での2枚目の出葉は10日後、3枚目、4枚目の出葉は、それぞれの9日後であった。 この後、どうなるか・・・。
 3月の末、苗の時期から9ヶ月余が経過して、待望の止め葉が出た。
 止め葉が出て、1週間後。 花序が下がってきた。 温室の高さが2m半程度であるので、花序の先端が天井につかえていた。 それが、花序が下がってきて、天井との間に、徐々に、隙間ができてきている。 花序が下がりはじめてから半日経過すると、以前のアングルでは、上部しか見えないほどに花序が下がってしまっている。 もうすぐ開花。
 花序が下がってきてから1日後、第1段目の花房が見えてきた。 第1段目花房にある果指は、27本あるようだ。
 第2段目の花房では、33本の果指が認められる。 果指を包んでいる苞葉が厚くて硬いので、なかなか開いた状態ならない。 果指は、苞葉に被われた状態である。
 第3段目以降は、20本前後の果指がついている。 ほぼ1日に1段の速度で、苞葉が捲れて花房が表れてくる。
 下段の花房は、日が経つにつれて、果指の根元が黒ずんできている。 根元が黒ずんでしまった果指(*5) は、生育が良くない。 そのうち、これらの果指は落ちてしまうだろう。
 どの段の果指まで成熟できるかで、バナナの収穫量が決まってしまう。
 果指のすべてが成熟するのは、おおよそ10段目の花房までのようである。 それ以降であっても、成長する果指があるが、歯抜けのような状態である。
 なお、バナナが実る過程を復習すると、まず、バナナの木の中心部から「花序」が伸びてくる。 その花序が、長く伸びるにしたがって、垂れ下がる。 花序の最も外側にある「苞葉」が膨らんで、「果指」が見えてくる。 更に、その内側にある苞葉が膨らんで、果指が露出する・・・を、幾度となく、繰り返す。 その果指は、最初は下向きについているが、果指が成長するにしたがって上向きに反ってくる。 この果指の一つ一つが成長して、果物屋で売られている「一本のバナナ」になる。 一本のバナナが三日月形に反り返っている所以である。
 

(*5) 根元が黒ずんでしまった果指からなる果房であっても、相当に重いものである。 その重さが、花序に負担をかけるようである。 しかし、この黒ずんでしまった果房の位置で果軸を切断することは、絶対にしてはならない。 もし切断してしまうと、切断位置から果軸が腐り始める。 時間とともに、この黒い果軸の腐りが、正常に生育している果指の所まで進んでいく。 すると、果指が熟していないにもかかわらず、果指が果軸から外れて落下してしまう


温室で初めて出た葉
(苗から27枚目)

温室での2枚目の葉
(28枚目)

3枚目の葉
(29枚目)

5枚目の葉
(31枚目)

7枚目の葉
(中央に次の葉が)

バナナの止め葉(flag leaf)(左)、花序(右)

左:花序の周囲長さ約33cm、
右:偽茎の周囲長さ約67.5cm

止め葉が出て1週間後の
垂れ下がり始めた花序

半日後の太い花軸(左)と
更に垂れ下がった花序(右)


第1段目の花房(27本の果指)(左側から、果指がチラッと見え始める、その1日後、2日後、6日後、2週間後)

第2段目の花房(33本)(右:4日後)
 

第3段目の花房(23本)
 

第4段目の花房(22本)

第5段目の花房(20本)(中:開花後4日目、右:開花後10日目)
 

第6段目の花房(19本)
 

第7段目の花房(17本)
 

第8段目の花房(16本)

第9段目の花房(13本)
 

第10段目の花房(中:10日後、右:右端に生育不良の果指が見られる2週間後)

第11段目の花房(右:2週間後に2本だけ大きく成長)
 

第12段目の花房(右:10日後)
 

第13段目の花房(右:4日後)
 

第14段目の花房

第15段目の花房(右:4日後)
 

第16段目の花房
 

第17段目の花房
 

第18段目の花房
 

第19段目の花房
 

第20段目の花房


着果したバナナの房
   

  樹上では上から順に熟していく房  


1本で210グラムと
充分に大きくなった
樹上で完熟したバナナ



完熟バナナの糖度は15.4%
 最初に植えた2本のバナナ苗が大きくなって実をつけたので、それぞれについて、各段の重さと本数を以下に示す。
 なお、収穫したバナナの木は、これ以後に実をつけることはないので、切り倒すことになる。 根元の太さが25センチメートルを超えるので、生半可な作業ではないが・・・。 この時点で、「ひこばえ(孫生え)」である「吸芽」が生えてきているので、それの1本はそのままに、それ以外の数本は丁寧に掘り取って、別の場所に植え換える。 これを繰り返すと、バナナの苗が等比級数的に増えるので、温室内がバナナで占領されてしまうことになってしまう。
重さ/kg 実の数/本
第1段目 4.0 27
第2段目 5.7 33
第3段目 3.4 23
第4段目 3.3 22
第5段目 2.9 20
第6段目 2.4 19
第7段目 2.2 17
第8段目 1.9 16
第9段目 1.2 13
第10段目 0.7
第11段目 0.2
27.9 200
重さ/kg 実の数/本
第1段目 4.3 26
第2段目 3.0 20
第3段目 2.9 19
第4段目 2.5 17
第5段目 2.4 19
第6段目 2.1 15
第7段目 1.7 15
第8段目 1.3 14
第9段目 1.1 11
第10段目 0.3
21.6 159

(3)パパイア

パパイア
(パパイヤ上部は温室の天井に届いている)
  
パパイアの雌花(左)、雌しべ(右)
  
雌雄花(左)、雄しべと雌しべ(右)
  
雄花(左)、雄しべ(右)

400gの完熟パパイア(種が3粒)
糖度(3ヶ所測定):11.1%、11.5%、10.5%
 パパイアを露地に置いておいたときには、寒くなるにしたがって花が咲かなくなってきた。 それが、温室に入れると再び咲くようになってきた。
 雌花は、花軸の所が丸く太っている。 雄花は、花軸がスマートなラッパ型である。 果実は葉腋部に1個ずつ着果するはずであるが、栽培条件が悪いと、雌花が欠落してしまうようである。
 着果したものは、徐々に大きくなってきている。
 着果して半年も経過して、やっと、果皮がわずかながら色づいてきた。 冬の時期を挟んでいたから、果実の生育が遅いのか・・・。
 左写真の左下側に写っているパパイアの完熟果を収穫。 果重は、400gである。 その糖度を測ると、11%前後である。 種が3粒しかなかった。 受粉が不完全で、そのために糖度が上がらなかったのか、それとも、冬を挟んだ寒い時期での成熟であったためか。
 これから次第に成熟していく果実があり、これらが次々と完熟していく。 これからの収穫果ではどうなるか、楽しみである。 果菜類であるスイカなどと同程度では甘さが足りない。 果実としては、22%以上が必要だ。
 後日談であるが、温室を増設して、そこにパパイアを植えた。 増設温室の加温は、以前からある温室からの温風を流し込んでいるだけで、単独での暖房設備は用意していない。 したがって、増設した温室の気温は、最初の温室の気温に比べて、冬季では2・3度低い。 温度不足で、ここでのパパイアは元気がなく、成長が止まってしまったものもある。 温室の気温差から、パパイアが正常に成長していくにはある温度以上が必須であり、それが最低室温として18度程度であるということが分かった。 同じ場所でバナナは次々と葉を出しているので、パパイアはバナナよりも高温性の作物であるということである。 果実を完熟させるためには、成長していくよりも更に高い温度でなければならないようだ。 パパイアの開花・結実を初春に持っていければ、果実が熟す時期が初夏から真夏になり低温による成熟不良を回避できるであろう。
    

青い果実

熟す前の果実

熟してきた果実

990g
(上写真右下の果実)

1490g
(上写真最上部の果実)

1100g
(上写真右下の果実)

1070g
(上写真左下の果実)

(4)マンゴー

マンゴー(定植時の様子) 奥:アーウィン、手前:玉文

玉文の花軸

玉文の花

受粉直後

幼果

成熟してきた果実

収穫した果実

玉文の糖度
 温室に、マンゴーを植えた。 ひとつは「アーウィン」である。 「アップルマンゴー」と呼ばれているものである。
 もうひとつは、「玉文」である。 アーウィンと同じように玉文も地植えであるので、鉢栽培に比べて、多くの果実を着果させることができる。 接ぎ木3年生苗であるので、来春には開花が期待できる。 玉文の果実は、アーウィンよりも、大きくなるという。
 植えて2年目の春になると、アーウインは次々と葉が出てくる。 その葉のいくつかは、病気のためか、葉先から枯れてくる。 正常な葉が少ないので、成長は遅々として進まない。
 玉文は、アーウインに比べると葉が大きい。 そのため、葉数は多くない。 葉は病気には強いらしく、部分的に枯れが入っても葉全体には広がらない。 主枝の先端がそのままに伸びるようにして、花軸が成長してきた。 その花軸に、多くの花枝が出てくる。 それぞれの花枝には、ブドウの実のように多くの蕾がついている。 それらが咲き始めた。 花枝の先端に近い部分にある花の方が、果実にまで成長するようである。 花枝の根元に近い花が受粉して幼果まで成長しても、いつの間にか落果している。 それは、養分移流の偏りによるものであろうか。 左の幼果は、開花して6週間後のものである。 花の残骸は見られるが、成長が良くない幼果は落果してしまっている。 その幼果が2ヶ月半経過すると収穫できる程度に熟してきた。 木が小さいので、果実は鶏卵大である。 糖度は、22.4%である。 甘い。 イチジクの甘さと同じである。 果菜類であるスイカやトマトなどで満足できる甘さは糖度12%以上のときであるが、メロンや果実であるイチジクなどの12%の糖度では甘さがもの足りない。 22%を超えないと、甘いという評価ができない。 その点では合格点を与えられる。 今後、地植えであるので、木がより大きくなって、大きな果実が収穫できるようになるであろう。

   
「玉文」と市販のマンゴー
(左側の赤くて丸いものが市販のマンゴー)
 「玉文」を定植して4年余、木は大きくなってきたが、姿は貧弱である。
 マンゴーの新葉は、新しく伸び出た枝軸の先端に、10枚程度が出てくる。 その葉が一旦落葉してしまうと、その部分から「新葉」が出てくることはない。 温室での栽培であるので、病気や虫、冬季の低温などで落葉してしまうことが多い。 落葉するにしたがって、その木の「葉の数」は、その分だけ減っていってしまう。 枝軸の先端部の葉をすべて失った状態が続くと、他の植物でも同様であるが、その枝軸は枯死してしまう。 マンゴーでは、古い枝からの出葉がないので、この枝軸の枯死が顕著になる。
 その「玉文」に、大きな実がついた。 左側写真の手の大きさと比較すると、実の大きさが分かる。 「市販品のマンゴー(左写真の赤くて丸いもの)」と比べても、遜色はない。 収穫して測ってみると、500グラムほどである。

(5)ファレノプシス
   ファレノプシスも、温度の管理と光の管理ができる温室なので、寒い時期にもかかわらず次々と咲いてくる。
 花の色と大きさの変化を狙って、交配してみる。 受粉させる側(母)として、白色の大きい花を咲かせるものを選んだ。 ピンク色の花を咲かせるものを、花粉を提供する側(父)とした。
 受粉は、雌しべの表面が(ユリの雌しべと同じように)粘液状になっているので、花粉塊を空洞内部にある雌しべに押しつけるだけでよい。 ただ、棒状に突き出ているユリの雌しべと違って、ファレノプシスの雌しべは空洞内部にあってその入り口は下を向いている。 受粉のためには、花粉塊を下から上へ差し入れることになる。 注意深くしないと、花粉塊を取り落としてしまう。
 受粉後数日で、花が萎れてきた。
 受粉して2週間後には花軸の根元部分が、1ヶ月後には軸の中程まで太くなり、2ヶ月後にはその太くなった軸が更に伸びている。
 

ファレノプシス
×
左が母、右が父

中央の黄色玉が
人工受粉した花粉塊

受粉後2週目(右下:受粉時)

受粉後1ヶ月(膨れてきたサヤ部分)

受粉後2ヶ月

受粉後3ヶ月

受粉後4ヶ月

受粉後5ヶ月
左:雄しべと雌しべの部分(キャップで覆われている)
右:キャップ(取り外した状態)
左:キャップの中に隠れていた雄しべ(黄色をした花粉塊)
右:花粉塊(取り外した状態)

下方から見上げた雌しべ
 実ったサヤから、種を取り出した。 その種を蒔いて発芽させるのであるが、その種に、「ラン類」に特有の問題点がある。 通常の植物の種では「胚乳」や「子葉」に栄養分を貯蔵し、発芽する時から光合成が始まる時までに必要とされる栄養の源となっている。 しかし、ラン類では、その栄養分の貯蔵量が貧弱である。 栄養分が少ないから、それに相当する栄養を外部から取り入れなければならない。 発芽時に、外部に栄養源がなければ、枯れてしまうことになる。 自然界では、「ラン菌」からの代謝放出物を、栄養源として利用できる。 人工的な条件での播種では、それに相当する化学物質を用意するなどして、発芽成長のための条件を整える必要がある。
 シャーレなどを使った人工培地への播種ではなく、ファレノプシスの栽培鉢にラン菌が存在しているという淡い期待を抱いて、その鉢に種を蒔いてみる。 シャーレでは種の状態を子細に観察できるが、鉢に蒔いた種の状態を知ることはできない。 ただひたすらに子葉が生えてくるのを待つだけである・・・。

 

E-Mailアドレスはこちら
totchanefarm@yahoo.co.jp
上記アドレスをコピーの上、
ご使用のメールソフトを使用して、
ご意見を送信して下さい。

 
とっちゃんファーム