とっちゃんファーム 
−青空とそよ風と大地と−

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育苗と本圃の管理
目次
(1)育苗資材 
(2)電熱温床 
(3)気候の変動 
(4)牛糞堆肥 
(5)肥料 
(6)成長促進資材 
(7)耕土 

キュウリの夏
目次
(1)品種 
(2)育苗 
(3)定植 
(4)定植後5週目 
(5)盛夏のキュウリ 
(6)呼び接ぎによる接ぎ木 
(7)断根割り接ぎ 

メロンを露地で
目次
(1)品種 
(2)栽培 
(3)ネットメロンの露地栽培 
井戸を掘って
目次
 (1)製作した井戸掘り器 
 (2)地表面から2.2mまで 
 (3)2.2mから2.5mまで 
 (4)2.5mから2.7mまで 
 (5)2.7mから3.3mまで 
 (6)3.3mから6.2mまで 
 (7)井戸枠の交換 
 (8)畑地への灌漑 
 (9)井戸の掘り下げ 
(10)6.5mの壁 
(11)設備の更新 
(12)6.4mから11.7mまで 

トマトの実は
目次
(1)品種 
(2)育苗 
(3)定植 
(4)開花 
(5)実が大きく 
(6)大玉トマトの接ぎ木 
(7)接ぎ木苗の生育 
(8)ミニトマトの紅小丸 
ニホンミツバチとともに
目次
 (1)重箱型巣箱 
 (2)巣枠式巣箱 
 (3)蜂玉の収容 
 (4)蜜蝋による誘引 
 (5)キンリョウヘンによる誘引 
 (6)ミツバチの飼育履歴 
 (7)蜜蜂飼育届を 
 (8)女王蜂の不調には 
 (9)ニホンミツバチの人工分蜂法の概要 
(10)養母を利用する人工分蜂の実際 
(11)実姉を使った人工分蜂の実際 
(12)早春の人工分蜂 
(13)逆巣型の人工分蜂 
(14)山都式(上桟式重箱法)の人工分蜂 
(15)分蜂の瞬間から蜂玉の捕獲を経て 
(16)分蜂群の飛来が4年ぶりに 
(17)金稜辺で誘引されたミツバチ群 
(18)真夏の人工分蜂 
(19)小ぶりな重箱型巣箱の製作 
(20)分蜂群はいずれの巣箱に 

イチジクの長い実は
目次
(1)バナーネ 
(2)ブラウンターキー 
(3)ロードス 
茄子の花は
目次
 (1)品種 
 (2)育苗 
 (3)ポット鉢上げ 
 (4)定植 
 (5)成育中 
 (6)定植後7週目 
 (7)定植後2ヶ月半 
 (8)ナスの接ぎ木 
 (9)フィルムを利用した接ぎ木 
(10)接ぎ木苗の生育 

温室で育つのは
目次
 (1)温室 
 (2)バナナ 
 (3)パパイア 
 (4)マンゴー 
 (5)ファレノプシス 



 
   育苗と本圃の管理   
 育苗からの野菜栽培である。
 果菜類については、初期の栽培は「自根苗」を使っていたが、次第に「接ぎ木苗」の育成法を習得して、それに移行していった。 接ぎ木苗を育成する上で、挫折を促すようなことが何度もあったが、振り返ってみれば、その最大の要因は「書物などに書かれている接ぎ木法に関する盲信」である。 そこには、相応の施設を整えた上で、大量の苗を生産しているプロフェッショナルによる方法が、忠実に記述されているようである。 しかし、アマチュアにとっては、「あり合わせの施設」による「劣悪な育苗環境」に耐えられ、「僅かな数のタネ」をもちいた「接ぎ木の成功率」の高さが、必須のことである。 書物などの解説者にとっては、プロによる完成した方法が最善であって、アマの特殊な条件を考慮することはないらしい。 そのような特殊条件下での育苗法が不首尾であったときの責任や、その育苗法を記述するだけの経験を積んでいないことによって、安易に書けるものではないことは理解できてしまう。
 さて、今では、「ナス」や「キュウリ」、「トマト」などは、すべて接ぎ木苗を使っている。 その詳細な方法は、「ナスの接ぎ木法」、「キュウリの接ぎ木法」、「トマトの接ぎ木法」に記述してある。
 その野菜を栽培している畑は、一昔前までは肥沃な耕土であったが、ある時の畑地利用(*1) の結果として、地味のやせたゴツゴツした土壌になってしまっていた。 そのような土壌を改良するために、有機物の積極的な施用を実施している。
 有機物である堆肥を多量に投入しているが、決して有機野菜栽培を目指している訳ではない。 収穫物の大きさや外観などの点から、有機物を唯一の肥料とした栽培(*2) には至っていない。

(*1) 松や杉、檜などの山苗を生産していた。 これらの苗は吸肥性が非常に強くて、それらの出荷時点での畑地には、肥料分がほとんど残っていなかったものと思われる。 土の性状も、単粒性の保水性の乏しいものとなってしまった。 残留肥料分がない畑に、成分量が明瞭な化成肥料などを計画的に使用すれば、それなりの品質の野菜を生産することは可能である。 しかし、土壌中の有機成分がほとんどない単粒構造のため、水分や肥料分の保持力が貧弱になっている。 そのため、常時の潅水と適時の追肥が必須である。

(*2) 堆肥資材は、その中に含まれる有効な成分量が、生産した場所や時期によって変動する。 そのため、成分量が明瞭な化成肥料などの施肥による栽培に比べると、堆肥のみの施肥では、収穫物の量や品質が作期毎に変動する可能性がある。


(1)育苗資材

育苗培土
 育苗資材について、容易に入手できて取り扱い勝手の良い有機物系の資材(*3) を使用している。 袋には「培養土」と表示してあるが、肥料成分として緩効性のものが入っているので、「種蒔き用土」としても安心して使うことができる。 僅かではあるが、有機物の畑への投入にも役立っている。
 

(*3) 有機系の資材の代表的なものとしては、「ピートモス」を主体としたものと「ココファイバー」を使ったものがある。 真夏での「パンジー」の育苗で試した限りでは、「ココファイバー」系の有機資材での発芽率が優れていた。 「ピートモス」は元々酸性の資材であるので、適切に中和処理をする必要性があったものと思われる。
 東日本大震災後、この培養土の袋のデザインが「そのまま」で、内容の変更と販売価格の引き下げがあった。 内容成分の保証含有量の表示がなくなり、肥料成分(3要素)が即効性のものに変わってしまったようである。 速効性の肥料を含有した培養土は、種蒔き用土として使うには不都合な場合がある。 以前の仕様は、コストパーフォマンスの良い種まき用土であったので、この変更は、まったくもって非常に残念なことである。
 もしかしたら、東日本地区では、旧来の仕様の(主要肥料成分として、緩効性のものを含有している)培土を、市販しているかも知れない。 それが入手できれば、安価で優良な種まき用土として、使ってみる価値があるのだが・・・。

 
 「ココファイバー」を主体とする培土を、種蒔き用の用土として重宝してきた。 ところが、この培土の含有成分が、あるとき変わってしまった。 その変更によって、種蒔き用土としては、使えなくなってしまった。 そこで、それ以外の培土(*4) から、種蒔きに適したものを捜す必要性が生じた。
 試す作物は、タマネギ(*5) とする。 培土による生育の違いが出易いものとして、これを選んだ。 もちろん、他の作物では違った結果が得られることを承知の上での選択である。
 3種類の培土について、上に培土袋、下に種蒔きして1ヶ月後の生育状況を示す。 培土間に生育の違いが見られる。

育苗培土(1)

育苗培土(2)

育苗培土(3)
播種後1ヶ月
 

(*4) 試用した培土は、今後、安定して供給されるもの(大手の農業用資材の販売業者の取扱品)の中から、ある時点で近くの販売店で購入できたものである。 これ以外にも適当なものがあると思われるが、容易に入手できないものは、日常的に使用できないので不適当である。
 なお、2番目の育苗培土については、「ピートモス」主体の培土であって、水持ちは優れているが、そのためいつまでも水が滞留しているようである。 そこで、若干の水捌けをはかるために、3番目の育苗培土を2割(2番目の育苗培土の4に対して3番目の育苗培土を1の比率)だけ加えてある。

(*5) 「晩生こがね」

 
 花卉についても、培土による発芽と生育の違いを比べてみた。 試す花として、ケイトウ(*6) を使った。
 育苗培土(3)は、野菜で使ったものと同じである。 窒素200mg/L、リン酸400mg/L、カリ300mg/Lである。 揃った細粒の種蒔き用の培土であるので、保水性が良さそうに思えるが、実際には、中間よりは良くない方に近い(水捌けが良すぎる)。 土詰め機によるセルト レイへの充填効率を良くするためにか、均一細粒の培土になるように調製してある。 同じ条件で散水しているので、この培土にとっては乾燥気味な管理となっている。 この水持ち性が、野菜育苗の場合には大きく影響していたので、花卉での結果には興味がある。
 育苗培土(4)は、ポット・プランター用の培土で、種蒔き用ではない。 窒素260mg/L、リン酸1,240mg/L、カリ140mg/Lである。 リン酸が、他のものに比べると、かなり多く、カリが半分程度である。 含有肥料成分が緩効性であることから、種蒔き用土として使えることを期待した。 この培土のメリットは、種蒔き用の培土に比べて、体積当たりで半値以下という点である。 この培土は、プランターなどでの培土として使う用途から、大きな粒が混じっている。 セルトレイに入れて使うために、特に大きな粒だけ「ふるい」を使って取り除いた。 保水性は、全体的にコロコロの培土で悪いように見えるが、実際には中間よりやや大きい(水捌けが少しだけ悪い)。
 育苗培土(5)は、種蒔き用として売られている培土である。 肥料成分の含有量は、窒素330mg/L、リン酸290mg/L、カリ310mg/Lである。 保水性は中間である。
 双葉では、どの培土も、種蒔き用であるかどうかに関係なく、すべて、発芽してきている。 ただ、一部に、他に比べて小さい苗が見られる。 発芽遅れの苗である。
 本葉2枚の段階で、発芽遅れの苗は、このときでも、成長が遅れていて小さい。 培土による成長の違いについては、セルの穴径を基準にして比較できる。 僅かながら成長に差がみられる。 葉の色も少し違うようだが、その違いは分かり難い。
 播種して1ヶ月後の苗の様子である。 生育の違いが判別できるように、2つの培土を並べて示した。 ここまで苗が成長してくると、培土による違いが出てくる。 種蒔き直後の発芽具合の善し悪しに加えて、苗の成長を支えている培土含有の肥料成分の違いが明瞭になってきている。
 肥料によるイオン濃度が低い方が発芽には有利であるが、イオン濃度が低いままだとその後の成長が抑制されてしまう。 苗の成長を優先すると、種の発芽に悪影響がでる。 セルトレイで1ヶ月まで育苗するためには、この相反する条件を両立させることが要求される。

育苗培土(3)

育苗培土(4)

育苗培土(5)
双葉
本葉2枚のとき
播種後3週間

培土(3)←─┘└─→培土(4)

培土(4)←─┘└─→培土(5)
播種1ヶ月後

培土(3)←─┘└─→培土(4)

培土(4)←─┘└─→培土(5)
 

(*6) 「八千代」混合

 
 夏播きのキャベツ(*7) について、培土による発芽と生育の違いを比べてみた(*8)育苗培土(6)は、最初に取り上げたココファイバーを主体として、3要素の肥料成分が即効性のものに変わってしまったものである。 この培土について、野菜の種蒔き用土として、どの程度使用できるかどうかを再確認することにした。
 それ以外は、花卉の発芽・生育試験で使っている培土である。
 双葉では、どの培土も、種蒔き用であるかどうかに関係なく、順調に発芽してきている。 発芽に関しては、花卉のケイトウよりも、揃った発芽をしている。 発芽遅れがないのは、キャベツの種はケイトウよりも格段に大きいことから、多少の発芽条件の悪さにも影響されないのかも知れない。
 本葉が1枚、2枚と順調に生育してきている。 双葉のときには、どの培土でも同じように生育していたものが、徐々に差が生じてきた。 培土に含まれている肥料の違いによるものか・・・。

育苗培土(3)

育苗培土(4)

育苗培土(5)

育苗培土(6)
双葉
本葉2枚
└→培土(3)←┘└→培土(4)←┘└→培土(5)←┘└→培土(6)←┘
播種後1ヶ月
└→培土(3)←┘└→培土(4)←┘└→培土(5)←┘└→培土(6)←┘
 

(*7) 「彩峰」

(*8) タネをセルトレイに蒔くとき、「キャベツ」のような大きなタネであれば、指で一粒づつ摘まんでセル穴に入れていけばよい。 それよりも小さいタネの場合には、一寸した工夫がいる。 たとえば「ペチュニア」のような。 蒔き床にパラパラと播種するのではなくて、128穴か200穴のセルトレイに1粒ずつ蒔くような場合である。
 そのようなとき、タネ袋に入っている半透明フィルムの中袋が、便利である。 細かいタネの場合に、タネ袋の中に納めてある小さな半透明フィルムの袋にそのタネを封入してあることが多いが、その半透明袋のこと。 実際に使っているのは、ある種苗店の中袋     である。 半透明袋に「ある程度の堅さ」があって、片面が「透明」、他面が「乳白色」になっているところがミソである。 (注意:ここで示す種蒔きを試すとき、タネを取り出すために中袋を切り取る際に、右利きの場合には、この半透明袋の「下辺を切る」ことである。 「上辺を切る」と、手前側が「不透明な乳白色」の面になってしまう。)
 上とは別の種苗店のタネ袋では、中袋としてパラフィン袋    が使われている。 これは、裏表ともに透明である。 写真から分かるように、中袋そのものがペラペラしている。 中袋両面が透明なこととその性状から、このような播種の仕方には向いていない。
 まず、左手の平に、数十粒のタネを置く。 半透明袋の透明な面を手前にした状態で右手親指と人差し指で挟み持ち、この袋の中に、タネの一粒を(左手の平の溝を利用して)掻き上げるようにして入れる。 写真のタネは、「ペチュニア」では小さくて写らないので、「バーベナ」である。 バーベナのタネは、そこに写っている親指の爪との比較から、その微細さが分かる。 ペチュニアは、それよりも遙かに小さいが、この方法で一粒ずつ取り分けることができる。 それを、セル穴に落とし入れる。 静電気の作用でタネが落ちないこともあり、そのときは「中指を使って」半透明袋の下辺右端を弾くように軽く叩く(黄色の矢印)。 タネが落ちたかどうかは、半透明袋の手前の面が透明、向こう側が乳白色であるので、タネが袋中に残っているのであれば裏面の「白」を背景として「はっきりと」見える。 写真左上の拡大した部分をみれば、一粒の細長いタネが袋の中にあるのが見える。
 慣れてしまえば、複数のタネを袋中に拾い上げておいて、一粒づつ、セル穴へ落としていくこともできるようになる。 播種の能率が、向上する。 本来は指でつかんで1粒ずつ蒔ける「キャベツ」や「ハクサイ」の種でも、10粒程度を袋の中に拾い上げておいて、袋の右端を指で軽く叩きながら「1列に並んだ」種粒を端から1粒ずつ落としていくことで効率的に播種できる。
 発芽生育状況を、ペチュニア とバーベナ 、それに野菜のタマネギ について示す。 ばら蒔き播種では密集していたり疎らであったりするが、この播種方法では1穴に1個の種であるので、すべてのタネがほぼ同じ育苗条件で発芽し、生育することになる。 等しい量の培土の中で、ほぼ同じ環境での発育であるので、発芽や生育の良否は種自体の性質によって決まるものと思われる。 「ペチュニア」では揃った生育が見て取れるのに対して、「バーベナ」の不揃いな生育が目立つ。 ポットに植えかえられるまでに育った割合は、ペチュニア「デュオ ミックス」については71%、バーベナ「オブセッション」については70%である。 タマネギ「ケルたま」については、そのシーズンの気象条件が良かったのか、育苗率(播種したタネ数に対する定植可能な苗数の割合)は91.6パーセント(1袋20ミリリットル中のタネの数:2,223粒、定植した苗数:2,037株)である。


(2)電熱温床

電熱温床の外観

温床の内部
(温床内部の右方にサーモ
 スタットを含む制御装置)
 厳寒期である2月初めの「ナス」から、1年間の播種・育苗が始まる。 そのため、「温床」は、不可欠である。
 温床の上側部分には、二重の「覆い」がある。 「上部の覆い」は、「降雨」、「降雪」、「降霜」、「下降してくる冷気」を受け止め、温床設備に直接降り掛からないようにすることを目的としている。 透明ポリカーボネート波板である。 「下部の覆い」は、温床内部を密閉するためのものである。 厚さ0.1mmの農業用透明シートを使っている。
 左側の写真で、左方は「下部の覆い」を閉じたときの、右方は開けたときの様子である。
 温床の側方も、前面は一重であるが、それ以外は二重に囲ってある。 「外側の囲い」は波板である。 主として、「北風」などの強風を防ぐ目的である。 「内側の囲い」は、通気を遮断し、断熱をはかるために、コンクリートブロックを隙間なく積んだものである。
 温床内の温度は、100ボルト、500ワットの電床用ヒーター線(たとえば、「農電ケーブル1-500」など)を埋め込み、加温する。
 温度調節のために、サーモスタット(たとえば、「MH1210W」など)によって、ヒーター電源のオン・オフをおこなう。 「ナス」などでは、一日中一定の気温に保つよりも、夜間には多少低い温度にする方が良いとされている。 したがって、サーモスタットの「感温部」を、地表に接して置くことにする。 夜間では、ヒーター線に近い「地面の温度」は「気温」よりも高めになるので、結果的に、「設定温度」よりも低い「気温」で推移することになる。 日中の気温は、太陽からの輻射線により、「地面の温度」と「気温」は、ほとんど等しくなる。
 なお、ヒーター線をそのまま土中に埋め込んで使用しているので、ヒーター線の絶縁用外被の劣化によって、漏電する可能性がある。 そのため、漏電ブレーカー(たとえば、定格電流15アンペア、定格漏電感度電流30ミリアンペアの「BJS1531N」など)を介して接続することは、必須である。

(3)気候の変動
 春の訪れは、年による変動が大きい。 春蒔き野菜の種蒔きは、その変化にあわせることも必要である。 特に、「ナス」の接ぎ木苗は、基本的に80日程度の育苗期間を取ることから、2月上旬にタネを蒔くことになる。 この時期でのその年の寒暖の予想は、「ウメ」の開花時期が参考になる。 ただ、ウメの開花を待たずに種蒔きする年もある。
 下に、果樹などの開花日や芽吹いた日を示す。 長年のデータであるので、いわゆる「温暖化」の指標として使えそうであるが、これからはそうした現象が進行しているとする傾向は認められない。 これらのものが「温暖化」に関して「鈍感である」ということであれば、それを「否定する」ことにはならないことになるが・・・。

ウメ、モモ、スモモ、コブシ、フジ、キウイの開花日とサンショウ、キウイが芽吹いた日

 ウメの開花が、かなり早い年がある。 厳冬期での開花では、受粉後の幼実が、寒さに曝されてしまう可能性が大きい。 そうすると、実の成長が阻害されて、萎びて落果してしまう。 開花時期が、梅の実の豊凶を左右することになる。 このように、ウメの開花が早くなったり遅くなったりするが、その長期的な変化の傾向は認められない。
 モモスモモの開花日については、ほぼ2週間の範囲に収まっていて、比較的安定している。 この20年間の開花日の推移をみると、数日程度の前進があるように感じられるが、統計的な有意差はないようだ。
 平成18年(2006年)は、ウメやフジの開花が遅かった。 特に、フジは1ヶ月ほども遅れて咲いた。
 平成10年前後(1998年前後)と平成14年(2002年)での早めの開花とは、対照的である。
 平成23年の開花は、例年よりも貧弱である。 ウメとキウイの開花については昨年よりも早かったが、それ以外のモモ、スモモ、コブシ、フジの開花とサンショウ、キウイの芽吹きは遅い。 特に、キウイの芽吹きは、今まででもっとも遅い。 前年の5月・6月の低温傾向と8月・9月の少雨の影響か。
 平成24年の開花も、晩秋から冬にかけての低温傾向と、冬季の無降水(本格的な降雨は、2月になってから)の故であろうか、ウメ、スモモ、コブシの開花やサンショウの芽吹きが遅い。 モモの開花や、キウイの芽吹きは、昨年並みである。
 キウイの芽吹きの時期については、多少の波はあるものの、この20年余のスパンでみると、後退傾向にある。 平成初期には3月中の芽吹きも珍しくなかったのに、最近は4月中旬まで遅くなっている。 3週間以上の遅れだ。 モモの開花が3月末〜4月初頭でほぼ一定しているのとは、対照的である。
 ところで、沖縄の桜の開花が、気温の低い山の上から、気温の高い下に向かって進んでいくと、聞いたことがある。 山の高いところにある桜の方が、冬の寒さに、より強く感応するからであると。 そういうこともあるから、芽吹きの後退現象から、寒冷化に向かっているとの速断は、しないほうがよい。
 2015年のキウイの開花時期をみると、この数年で前進傾向にある。 5年前に比べると、10日ほどの早い開花である。 しかし、5月上旬に開花したこともあることに比べれば、この数年の変化は寒暖の波による遅早の範囲内であろう。

(4)牛糞堆肥

堆肥の山
 有機質の資材である堆肥として、牛糞堆肥を使用している。 これを年に何回か施すことにしている。
 鶏糞堆肥も、有機物堆肥の候補としてあげられるが、つぎの点で好ましいものではないと判断している。
 鶏糞堆肥は、総有機物量に対する有効な肥料成分の割合が高い(*9) ので、

(1)適正な肥料成分量に制限して投入すると、有機質分としての施用量が限られてしまう。 土壌改良をめざしているので、相当な量の有機質を施用したい。

(2)有機質の多量投入を優先すると、窒素などの肥料分が多くなりすぎる。

(3)有効肥料成分の割合が高いにも関わらず、化成肥料ほどには成分量が安定していない。 作期毎に、窒素、リン酸、カリ成分の過多・過少が生じてしまう。
 ということで、有機資材として、牛糞堆肥の施用をしていく。 有効な肥料成分が低いということに対しては、後述の化成肥料の施肥で、補うことにする。 実際の所、牛糞堆肥の投入による有効肥料成分の施肥効果は、余り期待していない。
 

(*9) 香川県堆肥マップによれば(小数点以下1桁までで示すと)、
 窒素(N)リン酸(Pカリ(KO)
牛糞(乾燥)1.1%1.7%1.2%
鶏糞(乾燥)3.8%4.6%2.0%
であり、有機肥料を使う--kcyの家庭菜園によれば、
 窒素(N)リン酸(Pカリ(KO)
牛糞0.2%0.5%0.9%
鶏糞(乾燥)5.3%4.1%1.5%
 であり、鶏糞堆肥成分分析によれば(小数点以下1桁までで示すと)、
 窒素(N)リン酸(Pカリ(KO)
鶏糞4.2%7.4%3.8%
 である。
 出典によって含有率にバラツキがあるということは、このような堆肥肥料に安定した成分割合を、期待することができないことを示している。


(5)肥料

化成肥料
 牛糞堆肥には、有効な肥料成分を期待していない。
 窒素、リン酸、カリ成分の施用のためには、高度化成肥料(*10) を使っている。 同じ含有量表示の野菜用の化成肥料であっても、メーカーによって、施肥効果に微妙な差があるようだ。 左は、今、主として使っている化成肥料である。 その化成肥料を、そこに示された量だけ施肥している。
 

(*10) 主要成分以外の施用効果を考えると、硫黄カルシウムなどを含む普通化成肥料の方が、優れているといわれている。 しかし、窒素、リン酸、カリの3成分の施用という目的に限れば、コスト的に、高度化成肥料を選択することも合理的であると思っている。
 肥料の効果には差がある。 10月1日に蒔いたキャベツ「春波」を、下記の肥料を元肥として散布して、11月6日に定植した。 もちいた肥料は、高度化成肥料(14・14・14)のA、B、Cである。 参考に、追肥用肥料のD,Eを、元肥として散布した。 追肥用肥料は、リン酸分が含まれずにその代わりに即効性窒素分が多いもので、元肥に使うとリン酸不足と作付け後期に窒素不足になる可能性がある。 定植して1ヶ月後に、使った肥料による成長具合を数値化した。 その結果は、
     高度化成肥料A : 6.4±1.5
     高度化成肥料B : 7.8±1.8
     高度化成肥料C : 7.4±1.1
  参考 追肥用肥料D  : 6.5±0.8
  参考 追肥用肥料E  : 8.3±1.5
であった。
 ただ、ここでは肥料のA,B,Cの間で優劣を決めたいのではなくて、含有成分が同じであるとされているが、肥料メーカーによって生育に差ができてしまうこと(「高度化成肥料A」と「高度化成肥料B」では、ひと目で生育の違いが認められる)を示すのが目的である。 入手可能な肥料のメーカーが複数あれば、是非、比較栽培されることをお勧めする。 なお、参考に使用した「追肥用肥料E」は、「高度化成肥料」と比べると、成長具合に格段の差がある。 高度化成肥料の窒素分が野菜に吸収されるためには、肥料に含まれているアンモニアが地中で酸化されて硝酸イオンに変化しなければならない。 この寒い時期では、その変化は緩慢である。 追肥用肥料に含まれている窒素の幾分かは、硝酸イオンである。 硝酸イオンであるから、そのままで、野菜が吸収できる窒素の形態である。 その窒素が、即効的に、成長に寄与しているようである。 耕地にリン酸分が残っていて、短期間で収穫できる野菜であれば、使っても良い肥料の候補になろう。 注意して欲しいことは、追肥用肥料であっても、必ずしも「充分な量の硝酸イオンが含まれている」とは限らないことを示しているのが、追肥用肥料Dである。

 

「かき殻石灰」肥料
 土壌酸度の調節とカルシウムの補給のために、蛎殻を原料とした貝殻粉末(*11) を散布している。
 酸度調節に一般的に使われている石灰肥料や苦土石灰肥料は、それぞれ石灰石やドロマイトを焼成して製造している。 そのため、カルシウムやマグネシウムが、水に溶けよい形のイオンとなっている。 即効性を期待する場合はよいが、過多な投入を避ける注意がいる。
 貝殻粉末肥料は、カルシウムが殻タンパク質に包まれた状態であるので、カルシウムイオンが土壌に急速に溶解することはない。 即効性はないが、過剰施肥の害は防げる。 さらに、そこに含まれている殻タンパク質であるコンキオリンも、有機物としての効果が期待できる。
 

(*11) 蛎殻は、カキの生産地では、産業廃棄物としてうずたかく積まれている。 その蛎殻を、肥料として再利用することは、環境保持のためにも、有効である。 蛎殻の除塩と粉砕の工程を効率的にして、安価に入手できるようになるとよい。
 塩分が貝殻粉末中に含有していることは、『岩塩と塩の話■農業における塩の利用―美味しい野菜づくり』などでも取り上げられているように、実は、それほど問題ないと思っている。


(6)成長促進資材

ぼかしの山

発酵資材
 ぼかしを、適宜、援用している。
 ぼかしの材料として、ほぼ等量の「菜種油かす」、「米ぬか」、「腐葉土」、「燻炭」、「生籾殻」を用意する(*12)。 燻炭の他に生籾殻を加えているのは、ケイ酸塩を増やすためである。 更に、この材料組成では炭素比が高いので、若干の「硫安」を加える。 そこに、発酵資材(*13) をふりかけて、よくかき混ぜる。
 数日後に発酵が最高点に達し、おおよそ65℃まで上昇する。 一週間後には温度も35℃まで下がり、安定した発酵が続いていくことになる。
 このぼかしを、畝の長さ10mにつき10リットルの割合で、定植前に混入した。
 葉菜類のキャベツやハクサイについては、ぼかし施肥の有無での生育の差違は、目視で確認できなかった。
 根菜類のジャガイモでは、ぼかしを混入したところの葉の繁り具合は、無施肥のところに比べて、期待に反してあまり良くない。 ぼかしが、ジャガイモの芽出しを阻害しているかのかも知れない。 収穫したじゃが芋の大きさも、差違は感じられない。
 手間暇かけているので、はっきりとした施肥の有効性が、欲しいところである。 果菜類で、糖度の違いなどを調査するのが、今後の課題である。
 

(*12) 水分量を25%とする処方が多いが、ここではそれよりも少ない水分量で発酵させている。 手で握っても、崩れる程である。 発酵の過程でも水分が発生するので、最初の水分量が多いと嫌気性発酵に傾いてしまう。 このぼかしは、土壌と同じ好気性の条件での発酵をめざしている。

(*13) 発酵資材としては、EM菌を含むものを使用している。

 


発酵液を含む資材

ブロッコリー「ハイツSP」
 発酵液を含む資材(*14) を調査した。
 市販の発酵液を含む資材の指示書によれば、原液を500〜1000倍に薄めて、数日間隔で使用するようになっている。 投与の効果をよりはっきりとした形で見るために、濃度の高い方の限界である500倍液にして、使うことにする。 定植直後から、500倍液を1株当たり200ミリリットル(原液としては0.4ミリリットルの分量)を、5日に1回の間隔で、46日間(投与回数が10回で、原液換算で1株あたり合計4ミリリットルになる)与えた。 初期の投与では、与えた液の大部分は、株の周りの土壌に吸い込まれていく。 有効成分が分解されないで土壌中に残存するならば、後々、広がっていく根から吸収されることになろう。
 定植1ヶ月半後での生育状況を見ると、
ブロッコリー(品種はハイツSP):手前が施用したもので、向こう側がコントロール(対照)である。 明らかに、施用した株の方が、生育が良い。 ブロッコリーには、有効である(*15) といえる。
キャベツ金系201号新藍):同様に、手前が施用したもので、向こう側がコントロールである。 写真で生育の違いを写し撮ることは、その差が著しい場合を除いて、難しい。 そのため、葉の長さや幅などの計測によって判断することにしたが、両者の間に生育の差は認められない。 キャベツでは、施用の効果は、ほとんどないといえる。
ハクサイ晴黄):左側の写真は手前が施用したもので向こう側がコントロール、右側は手前がコントロールで向こう側が施用したもので、同じものを方向を違えて写してある。 生育状況を観察すると、施用の有無による違いは、ない。
 種類による感受性の差があるのかも知れない。
 この発酵液を含む資材には、主要肥料成分の1つである窒素が5%含まれている。 窒素が植物体に吸収されると、茎葉を繁茂させる働きがある。 この資材の窒素成分として「尿素」が含まれている。 尿素は、葉からも吸収できる窒素成分である。 発酵成分による生育効果があるとしても、それ以外に、尿素が葉面吸収されることによって茎葉が繁茂する効果が予想される。 尿素吸収による生育効果を除外しなければ、「発酵成分の施用効果」の大きい小さいを決められない。 上記のやり方では、尿素の影響を除外できない。 現時点では、生育が良くなったブロッコリーであっても、それが発酵成分の施用効果であると断言できる証拠は、存在しない。 コストを比べると、発酵成分を含む資材は、その資材中に含まれている尿素の量と同じ量に換算した尿素の購入価格よりも、格段に高い。 もし、その資材に含まれている「尿素の葉面散布による生育促進」が主たる効果であるとすると、尿素肥料の使用で、同じ成長促進効果をその資材に比べて極めて低いコストで得られることになる。 発酵成分による生育促進効果が大きいことを確認できなければ、その資材の使用は、経済的な観点からは、合理的ではない。
 試験栽培したキャベツやハクサイでは、その資材に含まれている尿素による肥効を含めて、その効果は、目視では観察できていない。

キャベツ「金系201号」

キャベツ「新藍」

ハクサイ「晴黄」
 

(*14) この資材は、「『植物用○○酵素』に有機質を主体とした液肥を配合」した液体の物質であるとされている。 その中に有意な量の「酵素」が含まれていて「酵素としての能力」を有しているか否かは、「力価(りきか)」が明記されていないので、判断できない。 含まれていた酵素が「変性」してしまえば、酵素としての能力を持たない、ただの「ポリペプチド」、鶏卵の白身成分の仲間に過ぎない。 そこで、この資材を「酵素を含む資材」ではなくて、発酵により醸成された液体を含むものであるとして「発酵液を含む資材」と記すことにする。

(*15) ブロッコリー(「ハイツSP」)は、生理作用をもたらす物質に敏感であるように感じられる。 発酵成分を含む資材が、ブロッコリーに対して有効であるように・・・。 逆に、アセフェートを含む殺虫剤に対して、また、ニーム抽出物を含む農産物生産用資材に対して、この畑では、成長抑制作用がみられた。
 ところが、キャベツでは、アセフェート含有殺虫剤の散布によって、害虫による食害の有無に関係なく、成長が促進される傾向がある。 ブロッコリーでの抑制作用とは、対照的である。 ただし、成長促進作用があるとしても、アセフェートは積極的には使用したくない。
 ヒトに対して毒性の弱いアセフェートは、非常に毒性の強いメタミドホスを無水酢酸でエステル化することで合成されている。 ただし、メタミドホスそのものは、農薬や殺虫剤として日本では認可されていないほど、毒性が強いものである。 アセフェートは、酵素であるアセチルアミダーゼの働きによって、加水分解されて毒性の強いメタミドホスに戻ってしまう。 昆虫に取り込まれたアセフェートは、昆虫が元々持っているアセチルアミダーゼの働きによって、昆虫体内でアセフェートが有毒のメタミドホスに変化する。 その結果、昆虫は死んで(殺虫作用)しまう。 その他の動物では、アセチルアミダーゼが係わる加水分解反応によってメタミドホスに変化する能力が低いので、多少のアセフェートを取り込んでも生存を脅かす事態に至ることは少ない。
 ところで、一般的に酸が存在すると、その酸が触媒として働いて、エステル結合が加水分解されてしまうことが知られている。 もし、アセフェートのエステル部分が酸触媒によって加水分解されたとすると、毒性の強いメタミドホスに変化する。 食酢中には酢酸が含まれている。 食材に含まれているヒトに対して毒性の弱いアセフェートが、食酢を加える調理の過程で加水分解されて、その一部が毒性の強いメタミドホスに変化する可能性は捨てきれない・・・。

 


使用した菌体有機肥料

施肥区

無施肥区
 菌体有機肥料を試した。 1列のキャベツを植える畝を2メートル毎に区切って、交互に、菌体有機肥料を施肥しない部分と施肥した部分に分けた。 畝全体には高度化成肥料を施してあり、菌体肥料無施肥部分では高度化成肥料のみが肥料成分である。 菌体肥料の施肥は、メートルあたり一握りである。 数日後に、キャベツ苗を2メートルあたり6本となるように植えた(12月25日播種の「北ひかり」を2月16日に定植)。 その結果が左図である。 育ち具合を見ていると、苗の時点では、菌体肥料を施肥した部分の生育が芳しくなかった。
 菌体肥料中の窒素などの成分の効果も含めて、生育の促進を期待していた。 それの施肥量が推奨施肥量よりも多い可能性もあるが、期待している微生物の効果を上げるためにも、多めに施すことは十分にあり得ることである。


アミノレブリン酸を含有する液体肥料

発芽後日数
もち菜
キャベツ「春波」
3日目
−−−−−− 液体肥料の施用(1回目) −−−−−−
10日目
−−−−−− 液体肥料の施用(2回目) −−−−−−
17日目の状態

無施用←┘└→施用  

無施用←┘└→施用  
17日目
−−−−−− 液体肥料の施用(3回目) −−−−−−
24日目の状態

無施用←┘└→施用  

無施用←┘└→施用  
30日目前後
−−−−−−−−− 本畑への定植 −−−−−−−−−
 「アミノレブリン酸」を含有する園芸用肥料について、その施用効果の有無を調べた。 アミノレブリン酸は、「クロロフィル(葉緑素)」を合成する経路の最初の物質であるので、それの存在によって光合成が促進できる可能性を与える。 生育初期では、双葉を始めとする葉が占める割合が大きいので、クロロフィルの含量の多少がその後の成長を左右することになる。 そのようなことから、アミノレブリン酸を苗の段階で撒布することは、有効であると考えられる。
 そこで、アミノレブリン酸を含有する園芸用肥料を、苗の段階で施用して、その効果をみた。 その液体園芸用肥料は、野菜の場合には、1,000倍に薄めて、1週に1〜2回の頻度で使用することになっている。
 アミノレブリン酸を含有する園芸用肥料を、「供試液体肥料」と呼ぶことにする。 供試液体肥料の施用効果の調査は、濃度が薄いために効果が認められない場合を防ぐために、700倍の希釈倍率とする。 その希釈液を、発芽して双葉が揃ってから3日後に1回目、1回目から7日後(発芽後10日)に2回目、2回目から7日後(発芽後17日)に3回目を撒布した。 左に示す写真は、発芽後17日(3回目の撒布直前)と発芽後24日の状態である。 それぞれの左側半分は供試液体肥料を施用しない苗、右側半分は施用した苗である。 ここで、施用した苗と無施用の苗が隣り合っている境界で混ざり合う可能性があるので、希釈液体肥料の投与は、手間が掛かることよりも正確さを優先して、セルの一つ一つにピペットを使って注ぎ込む方法で実行した。 それにより、投与量が多くなったり少なくなったりすることを防ぐ効用もある。
 無施用(施用しない)区分には、何も撒布しないということではない。 (アミノレブリン酸を含まない)液体肥料(N:5 P:10 K:5 Mg:0.08 Mn:0.004 B:0.016)を与えている。 この液体肥料は比較の基本となるものであって、それを「基本液体肥料」と呼ぶことにする。 基本液体肥料を、上と同じ希釈倍率で、供試液体肥料と同じ時期に与えている。
 苗が乾燥気味の時には、基本液体肥料を1,000倍に薄めて、全体に撒布する。
 上に示した施用方法とその時期での効果の有無は、写真から判断して欲しい。 判断する上でのポイントは、「葉の大きさ」だけではなく、「葉と葉の間の黒い色の隙間の多寡」である。 良く成長している苗部分では、葉が重なっていて、背景の培土が隠されてしまうから。
 なお、供試液体肥料中には、アミノレブリン酸以外に、N:6.0 P:10.0 K:4.0 Mg:1.5 Mn:0.05 B:0.09 Fe:0.11 Zn:0.03 Cu:0.005 Mo:0.003 を含んでいる。 窒素の6.0パーセントの内訳は、アンモニア性窒素が1.0パーセント、硝酸性窒素が1.6パーセント、尿素としての窒素が3.4パーセントである。 アンモニア性窒素は、そのままの状態では植物体に吸収されない。 通常は、土中の細菌によって酸化され、硝酸態窒素となってようやく根から吸収されるものであるので、即効性の肥料成分とはいえない。 1.6パーセントを占める硝酸性窒素は、そのままで根から吸収されるので、即効性である。 尿素については、「葉」からも吸収される成分であって、根の発達が不充分であっても肥効が期待できる。 植物体への吸収の点で、最も優れた窒素の肥料成分である尿素が、窒素に換算して3.4パーセントも含まれている。 さらに、モリブデンなどの微量元素成分も含まれている。
 したがって、その液体肥料の撒布による効果の中には、アミノレブリン酸以外の物質による効果が含まれている可能性がある。 それを考慮して、効果の判断をする必要がある。

 ぼかしにしても、発酵成分を含む資材や菌体有機肥料、アミノレブリン酸を含有する液体肥料にしても、劇的な効果は、限られた品種・条件に限って現れるものかも知れない。 充分な有機質が施用されている場合には、ぼかしなどによる効果は、有機質による肥効の影に隠れてしまっているようだ。 これらの施用による生育の効果が、劇的にあらわれることを期待していたのに・・・。
 上の(*15)で、成長にプラスになる物質の例として、キャベツについてアセフェート剤が成長促進作用があることを述べた。 これは、「(1)害虫を駆除することで間接的に成長促進に関与している」ことが考えられるが、「(2)直接的に成長機構に作用している」かも知れない。 アセフェート剤非散布でありながら食害されていないものとの比較であるから、(1)である可能性は小さい。
 しかしながら、(1)の可能性が大きい例もある。 それを以下に示してみる。
 「マツ枯れ」と呼ばれる症状がある。 マツノザイセンチュウと呼ばれる線虫の一種の感染によるものである。 その可能性がある松の木がある。 季節は、9月末である。 その松の1メートル程の高さの位置に、直径5ミリメートル、深さ50ミリメートルの穴をあける。 その中に「ジノテフラン顆粒水溶剤」(*16) に少量の水を加えたものを流し込み、接着剤で封止  する。 ジノテフラン剤を選んだ理由は、

(1)顆粒剤であること(乳剤であれば、それに含まれている界面活性剤による生木への悪影響がある)

(2)生木中に浸透性があること

(3)毒性が低いこと

である。 なお、この薬剤はかんきつ、かき、なし、ぶどう、りんご、ももなどのアブラムシ類やシンクイムシ類等の害虫には適用があるが、当然ながら、マツの「マツノザイセンチュウ」には適用がない。 これの使用は、自己責任で・・・。
 それから10日後の様子    である。 枯れ上がった葉に混じって、緑色の新芽が出始めているのが見られる。 10月上旬で、自然な状態において、この時期に新芽が出てくることはない。 (広葉樹の場合には、台風などによって強制的に落葉させられると、新芽が出てくることがある。 この例は針葉樹である。 薬剤処理しなかったマツでは、このようなことは見られない。) これは、成長を阻害していた害虫を薬剤によって駆除したことで、植物体内の活性が高まってしまう。 広葉樹の強制的な落葉の場合と同様に、活性の高まりによる植物ホルモンバランスの変化が引き起こしてしまった影響(というよりは、望ましい効果)であろう。
 

(*16) ジノテフラン顆粒水溶剤の主成分は、ネオニコチノイドの1つである。 ネオニコチノイドの中には、ミツバチに影響を与える可能性があると報告されているものがある。 もし影響があるとすると、(1)噴霧散布中にミツバチに付着したり、(2)それが溶け込んでいる水をミツバチが取り込んだり、(3)散布された植物体の根や葉から花粉や花蜜に移行した有効成分を摂取した結果であろう。 ただ、1つ目によるものは、群舞しているミツバチに向けて散布した場合を除いて、その影響を受けるミツバチの数は多くない。 また、通常の注意深い使用法を守っている限り、2つ目の可能性は少ない。 3つ目が、主な原因であろう。 その場合、ミツバチが飛来してこない植物体内への注入使用では、影響は"零"となる。
 「マツ枯れ」対策として、松の樹体内へ注入する使用法は、ミツバチには無害であると考えている。


(7)耕土

ラッキョウ(辣韮)

葉ネギ(「万能葱」)
 耕土の性状が、幾年にもわたる有機資材の投入で、変化してきた。
 降雨後には、移植ごてが曲がってしまうほど硬くなってしまった耕土も、フカフカの土になってきた。 しかしながら、土の中の有機物が多くなったので、モグラの跋扈が問題になってきた。 モグラ対策(*17) は、つぎの課題になりそう・・・。
 

(*17) 「音波発生器」や「簡易風車」によるモグラ対策も、この畑では、効果的ではないようだ。

 

タマネギ
(「ネオアース」)

ニンニク(暖地なので、
品種は「ホワイト六片」
ではなくて「壱州早生」)

実エンドウ
(「ウスイ」)

 

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